harbor's diary

プレイしたゲームのこととか、その他いろいろ

ジャンドから見るモダンの光景④

激変したモダン環境、そして生まれたもう一つのジャンド

前回からだいぶ時間が空いてしまいましたが、すみません、4回目のジャンド記事です。(初回のリンクはこちら
《ギタクシア派の調査》・《ゴルガリトロール》の禁止、そして霊気紛争・アモンケットの参入と、あれからモダンもかなり変わってしまいました。
ジャンドというメタに左右されるデッキとしては、こうもモダンの環境変遷があると古いままではいられなくなってきます。
そんな中、ジャンドというデッキアーキタイプに大きな変革が起こることになりました。
モダン好きな人達にとっては皆さんお分かりでしょうが、そう死の影ジャンドです。

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本来《ギタクシア派の調査》の禁止により死ぬはずであったアーキタイプ、SuperCrazyZoo。
その残留思念とも言うべくして生まれた新たなデッキ、死の影ジャンドは、瞬く間に《死の影》をモダンのクリーチャーの中で一番気をつけるべきクリーチャー、モダン界の顔としてしまったのです
今ではグリクシス死の影、エスパー死の影と派生系もたくさん生まれ、すっかり半年前のモダンと現在のモダンでは戦場が全く違うものになってしまいました。
今回の記事では、従来のジャンド(便宜上、以下クラシックジャンドと呼びましょう)と死の影ジャンドの違いについて踏まえながら、僕が両デッキを使ってみての使用感を記していきます。
そしてなにより、来たる5/27・5/28は待ちに待った国内モダンGP、グランプリ神戸
神戸での長い戦いにて、皆さんの戦術や構築のなにか参考になれば幸いです。

クラシックジャンド

死の影ジャンドが流行る中、しかし僕はクラシックジャンドの調整を諦めていませんでした。
4月の話ですが、トリックスターで開かれたGPT神戸を優勝、モダン横綱選抜バトルでのTOP8など、ある程度の成績も残せました。

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こちらは4月の休日大会で3-0したリストで、僕独自の構築の癖をなるべく抜いて汎用的なリストを目指して作ったリストです。
死の影ジャンドになくて、クラシックジャンドにある利点は大きく分けて3つあると言えましょう。
一つは、ライフゲイン要素《漁る軟泥》《高原の狩りの達人》をメインから採用できます。
もちろん《漁る軟泥》は墓地対策、《高原の狩りの達人》は除去コントロール対策としてのパーツの意味を含めるので、より丸くどんなデッキにも勝ちうる構成を取ることができます。
二つ目は高マナ域カードの採用と《怒り狂う山峡》により、マナフラの受けがあります。
三つ目は墓地に大きくは依存しないことです。
サイド後の墓地対策によって機能不全になる度合いは、この後に紹介する死の影ジャンドよりは薄いでしょう。

しかし、5月になってからというもの、確かなデッキパワーは感じるんですが、僕はクラシックジャンドでの調整に少し限界を感じてきていました。
身も蓋もない話ですが、問題なのは死の影系デッキの対策により、ついでで対策されてしまっているアーキタイプだからです。
環境は死の影系デッキを目の敵にし、いかに死の影に有利な構築がないかと模索してきているのを実感します(かくいう僕自身もそうです)し、死の影ジャンドに刺さるカードはほぼ同様にクラシックジャンドにとっても刺さってしまいます。
《致命的な一押し》というカードの登場により、《タルモゴイフ》《怒り狂う山峡》の信頼性が下がってしまっているのも問題です。
もちろんですが、バントエルドラージ、トロンやヴァラクートなど、元から不利だったデッキへの相性を改善する何かは手に入れることはできていません。
僕は好きなので使い続けていますが、《稲妻》というカードの地位が下がっているのもありまして、クラシックジャンドを使うなら、《未練ある魂》を擁し、《貴族の教主》を通して2ターン目《ヴェールのリリアナ》が狙えるメリットを持つアブザンジャンクを使ったほうがいいのでは、と思うんですよね。
ただ一点その中でクラシックジャンドが強みかな、と僕が思っているのは、ミラーと言いますか死の影デッキに対しては強く出ることができるんじゃないかな、と思っています。
《突然の衰微》や《ヴェールのリリアナ》の枚数があちらよりは多いでしょうし、長期戦に強い構造をこちらの方がしつつ、《稲妻》での火力の睨みも効かせれます。
しかし、愛用のアーキタイプとしては無念、土地コンボとの戦いを有利にするためにGP神戸でクラシックジャンドを持っていくのは今回はやめて、新たな力、死の影ジャンドでの調整を始めることにしました

死の影ジャンド

死の影ジャンドを最初に考えついた人は、きっと紛れもなくジャンドマスターだったのでしょう。
なぜなら、このデッキはクラシックジャンドを使い込んでこそ感じるクラシックジャンドの核の部分、エッセンスをとことん絞って追求したデッキと感じるからです。
古くからの諺(?)、「1ターン目ハンデス2ターン目タルモ3ターン目ヴェリアナ」ってありますよね。
一番重要なのは、この中で1ターン目ハンデスだと思っていますが、この死の影ジャンドというデッキはほぼ必ず1ターン目ハンデスが打てるように作られたデッキです。
しかし、フェッチショックイン《思考囲い》なんかやってしまうと、ライフ15からスタートしてしまう…。
ならば、そのライフペイのデメリットを補う《死の影》で殴って殺すデッキにすればいい。
もともとクラシックジャンドは結局のところ《タルモゴイフ》で殴って相手のライフを0にするしか勝ち手段はありませんでした。
では、その部分に特化してとことん強めようという形で生まれたのがこのデッキです。

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こちらのリストは、5/20のモダン杯(なんと114名も参加してたらしい)で6-1してTOP8になったリストです。
死の影ジャンドは無妨害だと3ターンキルができるかもしれないという速さを持ちつつ、多くのキャントリップカードと低マナ構成により恐ろしいほどのド安定性も持ち合わせます。
《ティムールの激闘》は《死の影》とマッチした一発逆転カードで中途半端なアグロを許しませんし、クロック力の増強としてトロンやヴァラクートなどの土地コンボへの相性をかなり改善しています。
しかし、単体除去および全体除去カードにとことん弱くなっており、クラシックジャンドと違って《漁る軟泥》がいないこともあり、《瞬唱の魔道士》絡みの除去主体デッキに更に弱いデッキになってしまっていると言えるでしょう。

墓地対策に弱いのも少し気になる所です。
《ウルヴェンワルド横断》というカードのおかげで、《死の影》8枚、《タルモゴイフ》8枚のように運用できるのがこのデッキの強みなのですが、《安らかなる眠り》設置下では勝ち手段は《死の影》4枚だけで、あとは0/1の《タルモゴイフ》4枚、《地勢》と化した《ウルヴェンワルド横断》4枚と無駄カードがたくさんデッキに眠る状態となってしまいます。
まあ墓地対策されそうと思う場合は、サイド後《ウルヴェンワルド横断》の枚数を減らしたりするなど工夫してみましょう。

しかしこのデッキ、プレイングが相当難しいですね。
なにせライフは10点以下のあたりでうろついているのが多いですから、フェッチで土地から何点減らすか、コンバットは何体で行くか、などの判断が常につきまといシビアです。
例えばエルフ相手だとエンド前に《集合した中隊》から何体かエルフが出てきて、そして次のメインで《群れのシャーマン》でライフ削られる可能性があるのも考慮しておくとか、エルドラージトロン相手なら《歩行バリスタ》や《現実を砕くもの》がいきなりライフを削ってくる可能性があるとか、色んなデッキが次のターンにライフを何点削るのかのプランに精通していなければなりません。
また、《ミシュラのガラクタ》というカードのドロータイミングが何かの注意力テストをされてるのかってくらいに非常にいやらしく、気をつけてないとドロータイミングの誘発忘れをぽんぽんしてしまいます
競技レベル以上では誘発忘れ=ドローできないですから、簡単にディスアドを背負ってしまうことになります。
一日も後半、8戦目や9戦目で疲れてきてしまっていると、誘発忘れしそうで実に怖いですね…。
僕は《ミシュラのガラクタ》を常に斜めにして墓地に置いて、ドロー効果を解決するときに縦に直すってルーチンで誘発忘れを防ぐようにしてますが、まあ皆さんも自分なりの誘発忘れ防止策を立てた方がいいです。

デッキ調整あれこれ

ところで僕のデッキリスト何個か載せてますけども、僕は《致命的な一押し》というカードを採用していません。
理由は環境で嫌なクリーチャーを思い浮かべた時、《死の影》、《難題の予見者》、《現実を砕くもの》、《黄金牙、タシグル》、《グルマグのアンコウ》となるのですが、《致命的な一押し》が後半のクリーチャーに刺さらないためです。
そんなことを言ったら、採用枠の対抗である《稲妻》というカードはそれら5体のクリーチャーにほぼ無力なんですが、やはり最後のダメ押し3点につながる汎用性を考えると《稲妻》のほうがデッキに合っているかとも思っています。
ですが、これについては嘘な可能性がかなり大きいです、2枚の《稲妻》よりは《死の影》が簡単に対処できる2枚の《致命的な一押し》の方が長期的なGPでの連戦を駆け抜けれそうな予感もします。
ただ、僕が真剣にやめた方がいいと思っているのは、《致命的な一押し》4枚、《終止》0枚or1枚みたいな構築ですね。
フェッチタイミングも毎回満足にいじれるわけではないし、その1マナ差でどれほどのクリーチャーを除去する機会を無駄にすると思いますか?
いまや探査生物はモダンの大会に出たら複数回は必ず見るといってもいいくらいに、間違いなく跋扈しています。
主にその原因は、《致命的な一押し》に黒系のデッキが除去を頼ってしまっていて除去されにくいクリーチャーとして信頼性を勝ち得ているからだと思いますが、1マナくらい重くてもいいので手札で《致命的な一押し》が腐ってタシグルアンコウに殴られ続けるよりは最初から《終止》を採用しましょう…。
《致命的な一押し》4枚のデッキリストは、よくサイドに《終止》1が取られてたりするんですよね。
サイド枠がもったいない気もすごくします。

どうでもいいTIPS
《稲妻》で本当に焼きたいものの筆頭→《変異エルドラージ》、《呪文捕らえ》、《ヴェールのリリアナ》、《スラーグ牙》、《ミラディンの十字軍》etc
《致命的な一押し》で本当に殺したいものの筆頭→《死の影》、《難題の予見者》、《タルモゴイフ》、《波使い》、(フェッチ沼から)《ゴブリンの先達》etc

構築案に関することで他には、僕以外にこんなことを考えて採用しているリストはまだ見たことないので、現時点で採用できずにいましたが、除去コン対策としてサイドに《台所の嫌がらせ屋》を取るのはどうだろうか、と思っています。
ライフゲインするからありえねーって、普通は採用枠から外れるんでしょうね、きっと。
除去コン対策でタッチ白して《未練ある魂》、《イーオスのレインジャー》を取っているリストが多くあるのはもちろん知っています。
しかしあれをやると、デッキの安定性がある程度は欠けるデメリットに加え、サイドの枠として、土地コン対策・墓地対策・アーティファクト対策・トークン対策・バーン対策のどこかを弱めねばならないことになります。
2枚だけならともかくも、タッチ白のためにサイド4枚も用意するのは相当です。
(あと個人的に純正3色ジャンドから変えてしまうとデッキシンクロが悪くなるジンクスがあるのか、自分がタッチ白死の影ジャンドを試した時は今までやったことないレベルの0-5という戦績を残してしまいました。)
タッチ白をせずとも、徐々に勢力を増やしつつあるバーン、およびグリクシス死の影等の除去コンに強く出ていける《台所の嫌がらせ屋》はなかなかにサイドを節約してくれる意味で強いという気がしています。
同じくバーン対策の《集団的蛮行》はカンパニー系のタフ2が多いクリーチャーデッキや、とことんスペルが多いデッキに対してサイドインしたりしているので、どちらを採用するかは悩みどころです。
他にも汎用サイドや最大の障壁と考えるグリクシス系デッキ相手の対策として、《不屈の追跡者》《熱烈の神ハゾレト》《永遠の証人》《搭載歩行機械》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》《跳ね返りの罠》のあたりサイド案で考えてはいます。
ま、GPは15回戦ですから、何に当たるかわからないですし、サイドはなるべく広く取っておきたいですね。

どっちもジャンドだ

クラシックジャンドも死の影ジャンドも同じく「ジャンド」です
片方は古くから存在し、双子と合わせてモダンの代表デッキとして君臨し続けてきた伝統のジャンド。
もう片方は、新たな力を取り入れて双子も感染も亡き今の時代に合わせて最適化し、今年3月のモダンGPも優勝した新進気鋭の新たなジャンド。
この両方のデッキは本質的にはつながっていて、どちらかのデッキで重要なサイドプランやゲームプランの戦術はもう一方のデッキにも活かせる余地がきっとあるはずで、お互いがお互いのアイデアを尊重していいものだと思っています。

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何が言いたいかっていうと、最近見てるリトルウィッチアカデミアってアニメがとてもいいアニメだということですね。(え。)
あのアニメで出てくる、「伝統と新しい力が交わるとき、まだ見ぬ世界の扉が開く」って言葉はきっとこの2つのジャンドにも言えることなんだと思います。
「ジャンド」がGP神戸2017を制覇すること、いちジャンド使いとして心より願っています。
皆さん頑張りましょう。